総務省平成26年度「先進的通信アプリケーション開発推進事業」

交通機関を活用したコンテンツ配信システムの開発

フェーズII:早稲田大学、電気通信大学、富士通九州ネットワークテクノロジーズ、富士通研究所

実験協力企業:京浜急行電鉄、NTT東日本

フェーズIは こちら

 

  1. 開発の概要
  2. 本研究開発では、モバイルトラヒックの爆発的な増加に対応するために、列車を通信インフラ化し、 新しいネットワーク技術として注目されるNDN (Named Data Networking) プロトコルも活用し、 列車の運行特性を活用したコンテンツ配信アプリケーションの開発を進めました。アプリケーション実装、 プロトコル設計、テストベッド構築などを行い、最終的に京浜急行大師線にてフィールド実験を行い、 提案するアプリケーションの有効性を実証しました。

  3. 開発の詳細
    【開発アプリケーション】
    フェーズIの研究開発成果を受け継ぎ、フェーズⅡでも交通機関を活用した以下の通信アプリケーションの研究開発を行いました。
    先回り配信アプリケーションでは、従来のコンテンツ配信のようにコンテンツサーバと受信端末の間で エンド・エンドのコネクションを張るのではなく、コンテンツサーバと受信端末の間に駅と列車が介在し、 かつ列車の移動時間と停車時間を考慮して配信コンテンツを分割し、停車駅に先回りして配信を行います。 そして、列車が各駅に到着すると、駅サーバから列車サーバにコンテンツを複製し、列車内では受信端末に ストリーミング配信を行います。 このため、通信品質の安定化、無線帯域の有効利用、無線通信の省電力化、などの利点が得られます。

    また、オフローディングアプリケーションでは、DTN (Delay/Disruption Tolerant Network) の仕組みを活用し、 輻輳地域に滞在しているユーザが、非輻輳地域に移動する交通機関にトラヒックを預け、交通機関が 非輻輳地域に移動した後にバックボーンへのコンテンツアップロードを行ないます。 これにより、地域や時間帯に応じてしばしば輻輳が発生していた従来の無線LANアクセスポイントによる オフローディングを補完し、よりスムーズなデータ転送が可能となります。 また、オフローディングアプリケーションは災害発生時の通信途絶地域のトラヒック収集にも有効であり、 災害対策応用としての検討も進めています。

    図1: 先回り配信アプリケーション

    図2: オフローディングアプリケーション


    【テストベッドの活用】
    フィールド実験に先立ち、複数のテストベッド(図3)を構築して事前の準備実験を行ないました。 第一のテストベッドは、リモートサーバからのコンテンツ配信などに使用しました。 第二のテストベッドは、よりフィールド実験に近い環境のものとして、サーバ、無線LANアクセスポイント、 受信端末等を早大内に設置し、機器の演算性能や無線通信性能の評価を行いました。 第三のテストベッドは、フィールド実験用のネットワーク工事後に活用したもので、フィールド実験の 前後に受信端末を持参して列車に乗り込み、評価実験を行いました。

    図3: テストベッドの活用


    【京急大師線におけるフィールド実験】
    2015年2月20日に、京急大師線においてフィールド実験を実施しました。 図4は、今回のフィールド実験で使用したネットワーク構成を示します。 京急大師線の三駅(港町、鈴木町、川崎大師)には駅サーバと無線LANアクセスポイント、 列車内には列車サーバと複数の無線LANアクセスポイント(駅サーバ通信用と車内配信用)を設置しました。 また、三駅と早大内実験室は高速光回線で相互接続され、各駅にはコンテンツが先回り配信され、 早大内実験室では実験の監視と通信機器の制御を行ないました。 図5には、準備から実験実施まで、当日のフィールド実験の様子を示します。

    図4: フィールド実験のネットワーク構成図

    図5: フィールド実験の様子